「わっ!い、いきなり押さないでよ!」


急に押されたため、玄関からロッジの中に転がり込む。

後ろ手に扉を閉めながら、意地悪そうな笑みで緋那は言った。


「声かけたらいいのか?」

「あのね、女の子を押す方が問題!絶対あんた女の子にモテないでしょ?」

「な、何だとこの野郎!」


懐かしい会話だなと思いながらも、緋那と追いかけっこを始める。


「はい、そこまでー。」


いつの間にか、緋那は真郷に捕まっていた。

さっきまで鳥に嫉妬していた男が、架凛から渡された新聞を持って玄関口に立っている。

表情が真剣なことに気がつき、千夜も真っ直ぐ彼を見つめる。


「昨日、カルテットの森で少女を保護したと騎士団に報告した。友達と離れて迷子になったらしく探しているとしておいたよ。そして今朝の新聞、君のことも陸くんのことも書いてない。」

「つまり、千夜ちゃんはまだ異世界から来た人として認識されてないわけね。」


架凛の言葉に、真郷は頷く。