「この旅人のこと、どう思う?」


突然の背後からの質問に、男はたっぷり時間をかけてこう答えた。


「自分勝手。自己満足に過ぎない結末だ。」


その答えに、女は久々に笑顔を見せる。


「やっぱりね。言うと思った。」

「…分かっていながらなぜ聞いたんだ。そういうお前はどう思う?」


女は即座に答えた。


「善人気取り。」


男は一瞬言葉を失い、すぐに小さく溜め息を吐いた。


「笑いながら言う言葉か、それ。」

「おふざけはここまで。旅人だって、命をかけて創った世界で笑われてるなんて知ったら、きっと怒るわ。」


呆れて肩を竦める男に向き直り、女は言った。


「私たちは平和を守ってさえいればいい。」


男は先に立ち上がり扉を開ける。

ゆっくり本を閉じた女は、静かに呟いた。


「誰かが、呼んでいる。」