日本はある。
ただし、どこかいびつな形で、尚且つ大きさがおかしい。
いや、他の国の大きさがおかしいのだろうか。
「日本がオーストラリアよりも大きい…!?」
「えっと…ごめんなさい、それはどこの国の地域かしら?」
架凛の頭には疑問符が飛び交っている。
話した感じはしっかりしている。
食事も普通に摂れているし、精神が不安定とは言い難い。
それなのに、なぜ彼女は架凛の知らない国、または地域の名を出すのか。
「久階さん。」
突然名前を呼ばれて目を上げると、少し泣きそうな表情で彼女は尋ねた。
「ここ、この地図でどこの国ですか?」
「えっ……あぁ、ここよ、翠鳳国。このカルテットの森はそのあたりかしら。」
指指された場所を見て、千夜は泣き出しそうになるのを必死に堪えた。
まさに翠鳳国とは、いびつな日本を指している。
そしてカルテットの森は、さっきまでいたはずの場所、いびつではあるが東京の地域だった。
