不安定に宙に舞うボール。 木山には悪いけど…… お願い。 入らないで……。 ――――ポトッ。 呆気ない音が 体育館中に響いた気がした。 「おぉぉぉぉぉおぉ!」 「やべっ! チビ志乃が勝ったぞ」 周りにいたバスケ部が 驚きの余り、歓声を上げる。 私は無意識に 頬に涙が伝った……。 「うぅっ…志乃ぉ……」 ……勝った。 志乃が勝った。 でも、それを理解できないのは志乃自身だった。