ガラスのタンポポ#虹

本当は奏来のいれるような、少し濃いめのコーヒーが欲しかった。


なのに、なぜか花音に合わせようとしてしまう。


多分、これは罪悪感からくるもので、一緒にいたいとか、紅茶でいいなんてごまかしはオレの中では空回りに過ぎない。


じゃあ、どうしてそんなつまらないウソを重ねるのか。


オレは怖いんだ。


花音を失えば、もう奏来の影すらつかめなくなってしまう。


だから、オレは花音を縛らなければならない。


くもの巣で身動きのとれなくなった蝶のように。


「お待たせ。ちょうどさっき焼いたスコーンもあったから、お口に合うといいんだけど。どうぞ」


「ありがとうございます」


おばさんは紅茶とスコーンを置いて、部屋を出て行った。


オレンジペコとマーマレードのついたスコーンは、程良く酸味のきいた、もうすぐ終わる夏の味。


いつかこの味が思い出せればいいな、なんて。


思うのは、どうしてだろう。