「花音、悪かった」


花音はただ笑う。


哀しみをこらえながらオレに向かって笑顔を作る。


こんな汚いオレを責める事なく、いつだって笑ってた奏来のように。


「学校、ちゃんと自分の選んだトコ行けよ。奏来と同じ制服着る必要ないから、さ」


「でも…。翔くんは奏来ちゃんを見たいんでしょ?」


返す言葉が何もない。


オレの見たい奏来、それは花音だから。


「頑張って勉強するから、翔くんの高校、行くね?」


「花音…」


「フフッ。そのかわり、翔くん、あたしに勉強教えてね?だからそんな顔しないで?翔くん?」


どんな言葉を尽くせば、花音の切られた髪と心が戻るだろう。


知らない言葉を使って解き放たなければ、オレは花音さえも失ってしまう、そんな気がした。