ガラスのタンポポ#虹

「ただいまー」


玄関を開けると、兄貴の靴があった。


奏来の家に引っ越してから、ここに帰って来る事などめったにない。


「兄貴、帰ってんの?」


「翔、話がある。こっち来いよ」


空になった物置代わりの殺風景な元兄貴の部屋。


入るなり兄貴はオレの胸ぐらをつかんだ。


「オマエ、どういうつもりだよ?」


「何だよ、急に」


───ボコッ!


兄貴の拳がオレの顔を直撃した。


「…っ…!何なんだよッ」


「オマエ、自分のやってる事、わかってんのかよ?」


「意味わかんねぇし。何でオレが兄貴にボコられなきゃなんねーんだよッ!」


「意味?考えなくてもわかるだろ。オマエ、花音とつき合ってんだってな?」


「それが何だよッ!」


「今日1日中奏来ばっかりで花音の名前を何度呼んでやった?寂しそうにうつむきっぱなし、オマエも気づいて見ないフリしてたんだろ?救えないなら、守れないなら、中途半端な気持ちでつき合ったりすんな。花音を傷つけるな」


「兄貴に…兄貴に何がわかるっていうんだよッ!!」


───バタンッ!!


部屋を飛び出し、リビングに置いてあるオヤジの車のキーを持って家を飛び出した。