ガラスのタンポポ#虹

「さ、翔ちゃん、たくさん食べてね?」


おばさんのすすめてくれた寿司に遠慮なく手を伸ばして、次から次へと口に運ぶ。


「ホラ、奏来の好きなカニマヨ、食べろよ」


兄貴が奏来の皿にカニマヨを取ってやるのを見て、オレは苦く笑う。


オレの知らない奏来を兄貴は知ってる。


カニマヨが好き。


たったそれだけが、遠ざかってしまった奏来をオレに認識させる。


一度はオレのところにいた奏来。


オトばあの介護を一緒にした奏来。


その奏来は、今では兄貴と一緒。


これでいいんだ、と、オレは強く自分に言い聞かせる。