ガラスのタンポポ#虹

奏来が喉頭ガンになり、この家に引っ越した兄貴。


温かい目で見守る兄貴がうらやましく、恨めしく。


それでも兄貴の隣で笑う奏来を見れば、そんな感情もちっぽけなものに思えた。


奏来が笑えるなら。


奏来が生きてるなら、オレなんておまけの1人、ついでの1人でかまわない。


痛みはある。


まだ奏来への好きを抱えるオレの痛み。


でも、これでいいんだ。


密かに奏来を想おう。


実を結ぶ事のないこの想いはきっといつか、砂時計のようにサラサラと時とともに流れていくに違いない。


今はまだ、それができずにいるけれど。


‘時’


それはゆっくりでも刻む秒針と同じで止まる事は、ない。