ガラスのタンポポ#虹

車椅子を押して精神科へ。


カウンセリングは辛い事故にさかのぼり、花音の涙を引き出す。


清水という女医は、カルテに花音の静かにゆっくりと言葉になっていく感情をもらさず書き、いくつかの質問をした。


「足に痛みはありますか?」


「痛みというより…麻痺した感じで…力が入りません…」


「また立ちたい?」


「………」


「夜は眠れますか?」


「…あまり」


「わかりました。少し心が軽くなるような薬と睡眠導入剤を処方しましょう。野村さん、足はね、立てるようになるには焦る必要はありません。辛いリハビリもいりません。ただ少し待ちましょう。時間が経てば事故のショックや加害者の事も少しずつ薄れますから、ね?」


「どれくらい…」


「はい?」


「どれくらい待てばいいんですか…?」


「時間的なものは何とも言えませんが…。ただ、立たなきゃ、って気持ちより、不意に立ってしまった、結果歩けてしまったっていう感覚で元の状態に戻れると思いますよ」


「その不意が、いつまでもこなければ…」


「マイナスな思考はいけません。そのためのお薬ですから、気を楽にしてください」


「はい…」


「では、薬の調整をふまえて2週間後にまた受診してください」


「ありがとうございました」


オレとおばさんは礼を言って診察室を出た。