───ピンポーン


玄関を開けるともう支度を済ませた奏来が、オレにメモを見せた。


“1人で行けるもん”


「ダーメ。兄貴も言ってただろ?大事な検診だろ」


ふくれっ面を見せる奏来の手を握りたくなるが、グッとこらえて肩を押した。


「オレの運転じゃ、不安とでも?」


「………」


「って、否定しろよなー。大丈夫、大丈夫。安全運転だって」


黙って玄関の鍵を閉める奏来を、意味もなく見つめてしまう。


“?”


「奏来、オレとじゃ、イヤ?」


首を振る奏来。


こんな事聞かなきゃいいのに、ただ奏来を困らせるだけなのに、オレは。


オレは不器用な問いを投げかけてしまう。


「行くぞ、奏来」


黙りこくった奏来を乗せて、病院へ向かった。