ガラスのタンポポ#虹

「奏来、桜ってキレイなんだな。オレ、まともに花見したのなんて、人生初だぜ?」


奏来は口を開こうとも、メモを取ろうともせず、遠い目で桜を眺める。


繋いだ手に一瞬力をこめて、そして放した。


“翔ちゃん?”


「ん?何だ、奏来?」


“もう、春だね”


「奏来さ」


“?”


「こんなにも求め合ってるオレ達が離れる理由なんて、あるか?」


“うん”


「そんな理由、ないって言えよ」


“ううん、ダメ。ソラと翔ちゃんは、もうお別れしなきゃならないの”


「なぜ?」


“ソラは…。ソラは聖ちゃんと結婚します”


「許さない。奏来、オレと結婚しよう」


“あのね、翔ちゃん”


「うん」


“ソラは見てほしくないの”


「何を?」


“ソラは病気です。いずれ再発するの。お父さんやおばあちゃんみたく、死に近づいていくソラを翔ちゃんにだけは見られたくないの”


「再発なんてさせない。オレは奏来をオレより1日でいい、長生きさせるよ。だから、さ」


“ううん”


「じゃあ、オレが先に逝くと言ったら?」


“うん。翔ちゃんならそう言うと思った。だから今、お別れなの”


「…奏来………」