「雅弥ー!」



可愛らしい声で僕を呼ぶのは声と同じように可愛らしい彼女。


だけど彼女がこの声で僕を呼ぶときは大抵良いことがない。


勿論、良いことがないのは僕に限ってのことで、彼女はいつも楽しそうに笑っているんだけれど。



「なに?カレン」


「あのね、海へ行きましょ!」


「海?」


海ね。

今の季節は夏。
海へ行くのはおかしくも何ともないけれど、彼女のことだ。きっとまた、突拍子もないことを口にするんだろう。