「もうすぐバレンタインだね。」


芳さんはそう言いながら車を運転する。

そっか、もうすぐバレンタイン…。
汰一に、渡したいな。


「俺、虹姫ちゃんのチョコ欲しいなぁ…。」

「……分かった、作るね。」


あたしは男ってことになってるから、チョコは極力少な目だ。

汰一と彰とナカ、大輔と都とマミ。 あとお父さん…あ、オカメちゃんと陰山もかな。


「到着ー。」


車が止まったとき、目の前には見慣れた寮があった。


「ありがとう、芳さん。」

「うん。」

「おやすみなさい。」


そう声をかけてから、寮に向かって走った。

ドアを開ける直前、あたしは香水をつけ直した。