夏 色 の 風





「なるほど。

さっきのはそういうことだったのね」


「あれは直之が悪いから!

俺、そんな趣味ありませんから!」


「別に疑ってる訳じゃないって。冗談よ!

まぁ、直之も告白するなら今日しか

チャンスないもんね…。

上手くいけばいいけど、正直厳しいわね」




鋭い眼光で夜空を睨みつけ、

ニヤリと笑う早苗。

な、なんだ…。何か情報を掴んでるのか?




早苗の発言に興味津々な俺だったけど

早苗は話題をさっさと変えた。




「トマト嫌い、治りそう?」


何のことを言っているのか

一瞬分からなくて反応に困ったけど

すぐに俺のことだと分かる。


「日夜前進中」


「ばあちゃん家にいる間に

治しなさいよね。

都会のトマトは美味しくなさそう」


いーっ、と顔をしかめ

早苗は無邪気に笑う。

――キュン。

早苗もそんな顔するんだ…

ぁあ、可愛い。すごく可愛い!





にやけた顔をする俺を

不思議そうに見つめて、

早苗は俺の腕を引っ張った。


「円香と直之だわ!」


裏道を来た俺たちより、

正規の道を来た2人のほうが

早く着いていたらしい。




早苗に引っ張られて2人と合流した。