「…はぁ、はぁ」
「…はぁ、はぁ」
マンションから100m程離れた場所で
ようやく立ち止まって息を整えた。
屋上からはエレベーターを使ったけど
敵を撹乱するため3階で降りて
非常階段でマンションを脱出した。
おかげで足は棒のようだ。
「もう!
走るときは…はぁ、
走るって言いなさいよ!」
「言えない…だろ。…はぁ、
あんな状況じゃ…」
お互い息が絶え絶えで、
近くの木に寄り掛かった。
そして今更だけど、屋上に残してきた
2人のことを思い出す。
急いでメールを送った。
2人とは、夜店で落ち合うことにして
俺と早苗は3人組に見つからないように
こそこそと河原に向かう。
その間に第二部の花火が始まった。
さっきとは違い、今度は子供向けのようで
夜空にはキャラクターの顔の花火が
打ち上げられている。
「あの2人、大丈夫かしら」
歩きながら花火に視線を奪われつつ
早苗は呟くように言った。
「円香は直之に牙向けてるからなー…
上手く行けばいいんだけど」
最後は声を低くして言った。
聞こえるか、聞こえないか
微妙な声量だったけど
早苗は感づいたのか、『ははーん?』と
楽しそうに笑う。
まぁ、結果として
直之と円香を2人きりに出来たから
俺の役目は達成できた。
あとは直之がどうするかだろう。
頑張れ、直之!

