オロオロする俺に比べて、
『フン、言ってやったわ』と
勝ち誇った顔をする早苗。
そりゃあ、勿論相手方は
顔を真っ赤にして怒っている。
声にならない声で呻き声を上げると、
それまでの態度を一変させた。
「花火大会に男連れで何が悪い!」
ひ、開き直ったーー!!
冷や汗が流れる俺。
ごめんな、じいちゃん。
もしかしたらこの仁平、
血まみれでビリビリにされるかもしれない。
あぁ、なんてこった。
ごめんよ、じいちゃん。
帰ったら必ずお線香を……いや、
もしかしたら無事にばあちゃんの家に
帰ることは不可能かもしれない。
そしたらさ、じいちゃん。
アッチで仲良くしてくれ…!
そんな思いが全身を駆け抜けたあと、
俺は何を思ったのか早苗の腕を掴み
出口に向かって猛然と走り始めていた。
「ちょっと…亮佑!」
何度も腕を振り払われそうになるが
ここは俺だって男の意地がある。
昔、父親に言われたんだ。
『逃げるのもまた、男の勇気』
そう、そうだよな、親父!
だから俺は今、全力で逃げてるよ!!
なんかのアニメのキャラが言った。
『背中の傷は剣士の恥だ』
その通りかもしれない。
だが実際、そんなカッコイイことが
出来るほど俺は度胸が据わってない。
「待ちやがれ!!!」
怒声を上げて、3人の男が追ってくる。
捕まったらミンチにされる…!
せめて早苗だけでも…と
俺は今までに出したことがないような
足の速さで逃げ出した。

