夏 色 の 風





「おぉ…!」







木や高い建物が邪魔しないので

本当に目の前で大きく花火が弾けた。





「綺麗…」


早苗の呟きに、俺も無意識に頷く。




続けざまに、4・5発の花火が上がる。

拍手も起こり、俺もつられて手を叩いた。

隣の円香が、それを見て笑った。




こうやって花火を見るのは

初めてだった。

俺の実家はマンションだから、

天気がいいとビルとビルの間から

小さく花火が見える。




父親はそれをつまみにビールを飲んで

母親は枝豆を茹でてて、

俺はテレビのバラエティーを見て笑ってる。




うん、いつもこんな感じだ。




こんな風に、じっと花火を見ることはない。

それが余計に新鮮で、

しかも隣に早苗がいて

並んで同じものを見てる。

親友の直之も、友達の円香もいる。




『ドーン!!!』





夜空に響く音が、

なんだか心地好い。