夏 色 の 風





少し照れ笑いする円香。

こういう子はモテるだろうな…と思う。

実際に、直之は後を向いて

顔が赤くなったのを円香から隠す。




早苗は先に席に座った。

マンションの屋上には、

50席くらいの折り畳み椅子があって

奥の方にはベンチとテーブルもある。




花火の打ち上げは6時半からだが

もう席はほとんど埋まっていた。




俺も早苗に続いて席に座ると、

円香も駆け寄ってきて

俺の隣に座る。その隣に直之が座ると

あからさまに嫌そうな顔をした。




「ねぇ、席変わってよー」


早苗に言うが、早苗は『早い者勝ちだ』と

取り合わなかった。

直之はこっそり俺に、

「両手に花でいいわねぇ」

とぼやく。




俺に嫉妬するな!

そもそも直之が悪いんじゃないか!




隣の円香はずっと話しかけてくるし

早苗はずっと知らん顔をするし

直之からはずっと睨まれてるし…。







早く花火始まってくれ…!!










その思いが通じたのか、

薄暗い夜空に『ヒュ〜〜』と

打ち上げの音がした。




円香も、話しをやめて

空を見上げた。






『ドン…!!』




大きな音のあと、

ぱらぱら、と火薬が弾ける音がした。










目の前に、緑色の大きな花火が咲いた。