マンションの屋上に着いたのは
ぎりぎり1分前だった。
円香が本気で場所取りを
本気で頑張ってくれたらしく、
最前列を見事確保していた。
「もう、遅いよー」
「さっき、ヒロコ達に会って」
「えっ、みんな元気にしてるの?
卒業以来会ってないからなぁ」
「そこは安心して。
相変わらずだったから」
あははは、と2人はお腹を抱えて
笑い転げた。
「あのテンション、亮佑も…直之も
びっくりしたでしょ」
まだ直之とは距離を開ける気らしい。
「うん、まぁ」
そっちが気になって、
適当な返事をした。
円香が不思議そうな顔をしたので
ごまかすつもりで、
「円香も浴衣なんだね!
ピンク似合うじゃん!…なぁ、直之!」
直之に振って逃れた。
「おぉ、頭の花も円香らしいな」
円香はショートヘアなので、
早苗のようにまとめられないが
耳の上に大きな花のピンをしていた。
浴衣の柄も花柄だったので
色合いもすごく合っている。
「本当!?」
俺に確認するのは
直之じゃ信じられないからか。
「うん」
答えながら、どうやって
2人きりの時間を作るか
頭を悩ませた。

