一方早苗と同級生たちは

かなり盛り上がっていた。




「××高に行った○○くん覚えてる?」


「もちろん!!」


「実は、…で、……で、……を……して、

それで…………るんだって!」


「そうなんだ…大変だったんだね」


「まさか…が……するとは

○○くんも思ってなかったでしょうねぇ」




おばちゃんの井戸端会議みたいだ。

まぁ、久しぶりに会ったのだから

仕方ないのかもしれないけど。





あまりの盛り上がりに、このままだと

約束の時間オーバーになると思い、

勇気を出して早苗に近付いて

先に行く旨を伝えた。




「ぁっ、もしかしてぇ。

ナエちゃんの彼氏?!」


「えぇーっ!そうだったの?

ごめんなさい、お邪魔して!

ナエちゃんも言ってくれなきゃあ!」




誤解されているのだと気付くまでに

5秒ほど要したが、彼女たちは

待ってはくれなかった。




「あたしら、もう退散するから!

今度ゆっくり遊ぼうね!!

じゃ、ごめんね!彼氏さん」


「今度は根掘り葉掘り、

馴れ初めから聞いちゃうんだから!

覚悟しててねー!!

じゃ、バイバイ!!!!」


慌てて女子の後ろに隠されていた

男子2人が後を追う。


「じゃあな、早苗!」

「またな!」




約10分間の立ち話で

彼らが発したのはこれだけ。

少し気持ちが分かってしまうあたりが

なんだか切ない。





嵐のように立ち去って行った4人は

俺と早苗の関係を思いきり誤解したままだ。

後ろからその様子を眺めていた直之は

マンションに着くまでニヤニヤしていた。




早苗は、

「あいつらなら、きっとすぐ

別の話題で盛り上がって忘れるわ」

と相手にしていないようだった。