――カラン、コロン。




早苗の下駄が鳴る。

俺と直之はさすながに下駄はなくて

ビーサンを履いている。




自転車だと割と近くだった円香の家も

歩いてみると結構距離がある。




浴衣姿や仁平姿の男女と

何度もすれ違った。

早苗はその度に手を振ったり、

頭を下げたり、話しかけたりする。




この辺りの人は

みんな知り合い、顔見知りのようだ。




都会じゃ絶対有り得ない、と

直之と頷き合う。

我が家はマンションだけど

正直両隣の部屋の人は知ってるが

他の同じ階の人は知らない。

なんとなく分かる、とか

見たことあるけど…みたいな人は

結構いるんだけど。

早苗みたいに、

出会う度にわざわざ頭を下げたりはしない。

そんなことしてたら27階建ての

マンションの住人全員とすることになる。

絶対首が疲労骨折しちゃうだろ…!





マンションへ向かう途中で、

早苗の顔見知りに会った。




「あーっ、ナエちゃん!」


「ヒロコぉ!アリサぁ!

峰岸くん!嵯峨山くん!

うわぁ、久しぶり!!」


「卒業ぶりだわぁ〜!」




口ぶりから、中学の

同級生のようだった。

俺と直之は少し距離を置き

一応早苗を待つ。