出発前に、軽くご飯を済ませる。




途中で樽澤さんが来て、

みんなで写真を撮ろうと言った。




「い、嫌よ!恥ずかしいもんっ」


早苗がきっぱり拒否する。

だが樽澤さんも引かない。


「んなこと言わずに〜!

記念なんじゃから。ほら。

可愛い姿が台なしじゃあ。

なぁ、亮佑?」




俺に振る?!


完全に傍観しながら胡瓜を

食べていた俺は、

まさか振られるとは思ってなくて


「ぁあ…うん、まぁ」


と適当な相槌を打った。

だがそれで早苗は折れてくれたらしい。


「じゃあ、さっさと撮って

円香の家に行くわよ!」




一番張り切ってる、とは

とても言える状況じゃなかった。




樽澤さんがカメラを

セルフタイマーに設定して

大慌てでばあちゃんの隣に座る。




居間の縁側に、

後) 樽澤さん、ばあちゃん
前) 直之、早苗、俺

の順番に並んで撮った。




「明日、何時のバスだ?

バス停まで配達してやる」


「11時40分のやつです!

お願いします!!」




直之は嬉しそうだ。

早苗も写真の出来が気になるようで

「撮った写真見せて!」とか

「髪型大丈夫?」と心配していた。




今日の早苗は浴衣に合わせて

髪も簪で一つにまとめていた。

首筋…俗にいう、うなじが

物凄く綺麗でドキドキする。








俺はそんな気持ちを押し隠し…

直之は円香ちゃんへの気持ちを募らせ…

早苗は足取り軽く…




「じゃ、いってきます!」


「気ぃつけてなぁ」






出発した。