夏 色 の 風





「自分がそうしたいなら、

そうすればいいじゃない。

それに、あたし達はまだ高校1年生よ?

焦り過ぎ」




焦らせたのは、早苗と直之だ。

あんな難しい問題さらさら解いて、

進学の話しなんか始めるからだ。




俺はまだ、高校に入ったばかりで

成績も学年でビリ2だから

今がいっぱいいっぱいだ。

進路なんて考えてもいない。




夏休み前の二者面談のときも

担任にはっきり言い切った。

担任は『頑張れ。とにかく成績上げろ』と

励ましてるのか追い撃ちをかけてるのか

よく分からないけど言ってくれた。




だから、進路の真面目な話しを

堂々と話されると困惑するに決まってる。




特に、直之に関しては。

頭いいからもっと先のことを

考えてるのは分かるけど

将来"何になりたいか"まで

はっきり決まってるなんて。

俺に相談もなく。

…相談されても、俺じゃ何の答えも

出ないだろうけど。




「はぁ…なんか疲れた、頭が」


「こっちきてから身体ばっかり使って

頭使ってないからじゃないの?

とにかく、ほら。

臍曲げてないで、宿題終わらすわよ。

あたしも手伝うから」




――あたしも手伝うから

に乗せられて、俺は居間に戻って

やっぱり2人に笑われ、怒られながら

やっと夏休みの宿題を制覇した。