夏 色 の 風





「あは、まだ落ち込んでた」




声がして、顔を上げると

早苗がにっこり笑っていた。




畑に座り込む俺に手を出し、

立ち上がるよう促す。

早苗の手は借りずに立ち上がると

早苗は少しムッとしたようだが、すぐに


「亮佑のガキ」


と言われてしまった。




「…ガキじゃねーし」


「ガキだよ、ガキ〜!

いいじゃない、直之には直之の道があるし

亮佑にだって亮佑の道があるよ」




まともな事を言われ、

言い返すことが出来ない。




「ごめん、直之から

中学の時のこと聞いたんだ」


「俺が馬鹿でどうしようもない、って話?」


早苗が迷わず頷いたから、

少しだけ泣きたくなる。




馬鹿だけど…馬鹿ですけど。

だからって即答は…傷付く。




「そんなに直之と同じ道を行きたければ

中学の時みたいに本気になって

勉強してみればいいじゃないの。

"俺には無理"って決めつけないで」




さらにまともな事を言われて

言い返す言葉がない。




早苗はため息をついて、


「だから、ガキって言ったの」


と優しく微笑んだ。