夏 色 の 風





盛大なため息をつく。




俺が直之と同じ高校に入ったのは

純粋に直之が俺の目標だったからだ。




中学で初めての試験。

あいつは1番でオール100点。




そりゃあ、もう。

女の子からも、男からも

ちやほやちやほやされてて。




正直に言うと羨ましかった。

俺も最初の試験だったから、

それなりに勉強はしてたつもり。

でも、オール赤点ぎりぎりで。




『おぃ壱逗ー、お前クラス最下位だぞー』




なんて担任が言ったせいで

"馬鹿"のレッテル(まぁ、事実だけど)が

貼られてしまった。

同じクラスだった直之は、

頭のいい奴らと絡んでいて、

当然のようにそれを笑った。




次の試験も、その次の試験も

全部あいつは1番。

俺はクラスの最下位かビリ2。




直之は鼻高々で、

試験の答案が返ってくるたび

「おい、亮佑。お前何点?」

と聞いてくる。




あいつのは聞かなくても

自分から「今回も100点!」と

発信していたので、

それが無性に腹が立った。





次の試験が近付いたある日、

俺は部活をサボって

教室で真面目に勉強していた。




悔しかったから。

俺、負けず嫌いだから。

『打倒、直之!』って張り切って

勉強してたんだ。…これでも真面目に。