ハルばあちゃんと別れ、

樽澤さんに体よく袋詰めをやらせ

2人で2階に上った。




先に早苗と亮佑は着いていて

買物袋をぶら下げ、

話しが盛り上がっているようだ。




「ちょっと…」


2人の所へ今にも走り出しそうな

樽澤さんの腕を掴んで、

ナツばあちゃんは来た道を引き返す。




「どうした?」


「ちょっと…買い忘れた物があってねぇ」




ばあちゃんはとっくに、

亮佑の早苗に対する気持ちを

察していた。

だから、少しでも2人きりに

させてあげようと配慮したのだ。




これには樽澤さんも気が付いたようで


「おやおや、若いっていいねぇ」


「ジジババが邪魔しちゃいけないね」


2人は朗らかに笑って、

後ろを振り返った。




楽しそうに笑う早苗と、

幸せそうに笑う亮佑。




「さて、どうなることやら」


「ふふふ、ここに円香ちゃんが

加わったら…面白くなりそうだね」


「ぁあ…円香ちゃんも」


「分からないけど、

円香ちゃんみたいなのは

ああいう馬鹿っぽいのが好みだろうから」




自分の孫を馬鹿っぽい、と評し

ばあちゃんはニッコリ笑う。




「ジジババは見物でもしてようかねぇ」


「おぉ、じゃ、茶菓子でも買うか!

……………冗談じゃ」







たっぷり間を置いてから

早苗と亮佑に合流したばあちゃんは

遅れた理由を樽澤さんのせいにして、

文句を言おうとした樽澤さんに

三度"無言の圧力"を醸してみせた。




『ばあちゃん…強っ』


亮佑までもビビってしまう迫力に、

ばあちゃんはしたり顔で笑ってみせた。