夏 色 の 風





そんな思いを馳せていると

樽澤さんが右手に醤油を、

左手に焼酎を持って来た。




「子供らが寝たあとに、

どうじゃ?大人の時間と

いこうじゃないか」


「まぁまぁ」




ばあちゃんは笑ったが

ニッコリと笑ったまま動かない。

"無言の圧力"発動である。




樽澤さんは、クーラーのかかった

スーパーで背中に汗を流し、

「今すぐ戻してきます…」と

玩具付きのお菓子を母親にねだって

断られたときの子供のような顔になった。




それがおかしくて、

背中を見送りながら

クスクス笑ってしまう。




会計のレジに並ぶと、

円香の祖母、ハルと

たまたま同じ列に並んだ。




お互い気が付いて、

世間話に花が咲く。




昔から、ハルちゃん・ナツちゃんと

呼び合う仲良しである。

最近はお互い、円香と早苗のことで

話しが盛り上がる。

早苗の好き嫌いを治すのに

協力してもらったのもハルばあちゃんだ。




「うちの円香もね、

"あたしもナエちゃんみたいに

アルバイトしたいーっ"て言うの」


「まぁ」




最近、毎日部活に行くから

おかしいとは思っていたのだが。

まさかアルバイトを始めていたとは。

おおよそ、アルバイトを始めた

理由は察しがつく。




「でね、円香ったら

ナツちゃんのとこに来てる男の子に

会ってみたいって騒ぐのよ」


「あぁ、亮ちゃんのことかい?

あれまぁ。こりゃ…」




ハルばあちゃんは頭に「?」を浮かべたが

ナツばあちゃんなニヤリと笑って


「こりゃ、厄介なことになりそうだね」


と、ハルばあちゃんに

聞こえないように呟いた。