「じゃあばあちゃん、
1時間後に上の喫茶店でね」
「あんまりお金使わないようにねぇ」
「分かってます!
ほら、亮佑行くわよ!!」
早苗が亮佑の腕を引き、
亮佑は情けない顔をしながら
早苗に引きずられて行った。
「ワシらも手でも組もうかのぅ」
「あらやだ、樽澤さん。
奥さんに言い付けますよ」
ばあちゃんと樽澤さんは、
カートを押して食品売り場に向かった。
樽澤さんは、ばあちゃんが
車を出して欲しいときに
声をかける人の1人だ。
70歳を少しいったほどの年齢で
皺くちゃの顔だか凛々しい顔つき。
前歯が3本ないが、笑い声は豪快だ。
10年前に奥さんを亡くしてからは、
昔プレイボーイと名を馳せていた実力を
存分に発揮させて、
ご近所の独り身のおばあちゃんに
声をかけまくってメロメロにしていた。
だがナツばあちゃんと出会ってからは
ナツばあちゃんにゾッコンで、
全ての女性関係を絶って
ばあちゃんに惚れ込んでいる。
しかしばあちゃんは
それをひょいっとかわして、
樽澤さんを必要なときに利用していた。
……ばあちゃんも中々やり手である。