夏 色 の 風






早苗は2mの距離感を忘れ、

俺の腕にしがみついた。





「ど、どうなってるの…」


「さぁ…だけど…」




起こさないでおこう。

朝起きたときの2人の反応で

何が起きたか分かると思うから。




2人でそう決めて、テントを閉め

散歩に行くことにした。

今更早苗に叩かれた頬が痛む。




真っ赤になっているからか、

早苗も申し訳なさそうに隣を歩いた。




「びっくりしたから…あの、その…」


「あー、大丈夫だよ。

そりゃあの状況じゃ叩くよな」




最後に「早苗なら」と付けようとして

それを言った後のことを考えてやめた。








河原沿いに歩き続け、

完全に空が明るくなってから

テントまで引き返した。




ほとんど無言で歩いた。

だけど時々たわいもない話をして

少し笑うと会話が途切れる。




重苦しい無言ではなくて、

なんとなく居心地がよかった。





そういう風に思っているのは俺だけか?

早苗も思ってくれてるのか?

そうだったらいいのになぁ。