夏 色 の 風





「だああっ、胡瓜どこだよ!?」




暗くなってきた中、

見分けのつかない野菜に囲まれ

この中から胡瓜を見つけろ、と

ばあちゃんの命令。




…都会人なめんじゃねぇ…!




どれも一緒に見えてきた。

ああ、今晩うなされそう。








そんなとき。


「ハイ。」


目の前に胡瓜が突然現れた。


「え゙?!」


驚いて見ると、そこにいたのは

腰まで伸びた黒髪の、美少女――。




「だ、誰!?」


「それはこっちの台詞。

人様の家に勝手に入って

『胡瓜どこだよ!?』って喚く人

初めて見たわ」


「なっ…!俺は、ここの家の人間ですっ

ばあちゃん家なの!!

お前こそ、不法侵入ですよ?

ぁ、まさか胡瓜泥棒?!」




鋭く腕が振り下ろされ、

脳天がパッカーンとなりそうな位

強い痛みが俺を襲う。




「んな訳あるか。

そっか、ナツばあちゃん、

まだ何も言ってないんだ」