実際に俺はトイレしたい訳じゃないので

川に下りる階段に座った。




早苗も無言で隣に座り、空を見上げる。




その横顔を盗み見つつ、

俺も視線を追って空を見上げた。




濃紺な空に散りばめられた星。

どれもキラキラ輝いて、

そっと俺たちを見下ろしている。






温かい風が吹いて、早苗の髪が

ふんわり揺れる。

腰まである長い黒髪は、

艶やかでとても綺麗だ。




目を伏せて、どこか感慨深げにしている。




睫毛長ぇなぁ…

ファンクラブもあって当然、か。







そんなこと思っていると、

微かに、風の音に混じって聞こえる、





――早苗の寝息。




外ですけど?!

何か考え事してるのかと思ったのに!

ちょっと、ときめいたのに!

座ったまま寝れるなんて意外と器用だ…。




起こそうか迷って、

ちょっとその…思春期特有の?

悪戯心が動き出して、

早苗を起こさないように

俺のほうに引き寄せて、

肩に寄り掛からせた。




ムフフ…って俺はむっつりか!





………否定出来ないな、この状況。








リズミカルな早苗の寝息に合わせて

俺も目を閉じた。

久しぶりに心が落ち着いて、

いい夢が見られそうな気がする。