夏 色 の 風





「んでは、ご飯にすっかねぇ。

亮ちゃんが来ると思って、

美味いもん準備してたんだぁ。

亮ちゃん、悪いけども畑さ行って

ちょっと胡瓜もいできて」




「へーい」




張り切った顔のばあちゃん。

そっか、ばあちゃんに会うのは5年振り。

叔母さんの葬儀以来、会ってなかった。




叔母さんの法事とかも

全部母親一人が行ってたし

俺も受験とか部活とかで忙しくて

全然来る暇がなかったんだ。




外に出ると、さっきまでの蝉の声は

すっかりなくなっていた。

代わりに、蜩の声が心地いい。




はさみを持って畑に乗り込み、

胡瓜の棚を探し回る。

テニスコート2面分はあるであろう

中々広い畑と、都会育ちの俺。

あきらかに俺不利。アウェー過ぎて

胡瓜がどこに生えているのか分からない。




家は高層マンションだし、

近くに畑は全くないし、

行く機会もない訳で。

野菜なんてスーパーに行けばある、

って感覚だから、こういう

畑に生えてる野菜を見ることのほうが

違和感を感じた。