夏 色 の 風





「あっ、ごめん。癖で」


「癖…?」


「あぁーっ!どうでもいいとこに

ツッコミ入れないの!」




ペチン、と頭を叩かれる。

地味に痛いけどいつもよりは

パワーがない。




「こちら、磯島 円香(マドカ)。

で、こいつが壱逗 亮佑ね」




こいつって…

かっこよく、親指で俺を指す。

いつもと随分態度が違うじゃねーか。

友達の前だと猫かぶりかよ。

俺の前でも少しはかぶって欲しい。




「よろしくね、亮佑くん」


「ぁ、いいよ。亮佑で。

俺も円香って呼ぶから」


「あはは、オッケー!

じゃあ亮佑ね!こっちきて

どれくらい経つの?」




円香は話しやすいタイプの子だった。

ショートカットの髪がよく似合い、

色白の肌に大きな瞳が印象的だ。

声は早苗と比べるとだいぶ高くて、

でも煩くないレベルの声量だ。




すぐ打ち解けて、

髪を乾かした後に

外に出かけることになった。




「まだこっち探検してないんでしょ?

色々教えてあげるよ!」




早苗が昔乗っていた自転車を借りて

3人でサイクリング。

久しぶりの自転車に興奮したけど、

それを涼しくなり始めた風が

やわらかく受け止めて涼を与えてくれる。