夏 色 の 風





ワンピースは買うことにしたらしく

お店の人に預かってもらう。




俺はその間、店内をうろちょろして

女の子らしい、ベルト通しに

リボンがついたショートパンツに目が止まる。




早苗はの私服いつも、"楽だから"と

ワンピースなどが多い。

ショートパンツなんて見たことない。

…うん、学校のジャージ姿ならあるけど。




「何見てたの?」


後ろから早苗が、また大量の服を持って

俺を覗きこんだ。



顔が近い!顔が!



慌てて飛びのくと、不思議そうな顔をして

俺の視線の先にあったショートパンツに

目をやった。




「ぁ、可愛い!」




すぐに目を輝かせる。

が、途端に俺に振り返って


「なぁにー?

もしかして、あっちに残してきた

彼女に似合うなぁ、とか考えてるわけ?」


「彼女なんていねーもん」


「…ふぅん?」




ニヤニヤした顔でこっちを見るな!!




ショートパンツを手にして、

試着室に再び行く。

今度は試着した姿を俺に見せて、

「ど、どう…?」

と不安げな顔で聞いた。




「似合う似合う!

可愛いじゃん」


「ありがと…じゃあ、コレも買っちゃお」


また店員さんに預け、俺に持たせた服を

試着室の鏡でうんうん唸りながら

「どう?変?」とか「んー…派手かな」とか

独り言なのか俺に意見を求めているのか

よく分からない発言を繰り返した。