雷の音がおさまるまで

ずっとくっついていた俺ら。




帰り道、俺が早苗用に持って来ていた

傘に穴が開いていたから、

早苗は不本意そうにしながらも

1つの傘を奪い合うように帰った。


「そういえばさ、

絶対濡らしちゃダメなものって、何?」


「んー?ぁあ、それか。

ふふふ、あ・た・し!

風邪引いちゃったらばあちゃんに

迷惑かけちゃうじゃない」



はぁ…そのためにダッシュした俺って…

なんか虚しい…。








先に帰ってきてたばあちゃんに

「2人ともずぶ濡れ!」って

怒られたけど、悪い気はしなかった。




そして俺は気付いてしまったんだ。




早苗と一緒にいる時間が

"幸せ"なんだってことに。






今までにこんな気持ち、

なったことないけど…

そっか。これが…











これが、『恋』なんだって。













はっきりと分かってしまったんだ。








でもそれは、許されない

ことのような気がして、

ずっとひた隠し続ける。




今までの、ばあちゃんと俺と早苗の

また違った意味の"幸せ"を

壊したくなかったから。




手放すには惜しすぎて

だけどこの気持ちに気付いた途端

抑えられないほど苦しくて。









ぎゅっと目をつぶって

そっと気持ちに蓋をして

いつかこの蓋が開く日を夢見て

雷の鳴った日、俺はゆっくり眠りについた。