――それから、しばらく経って。




それは突然のことだった。




「亮ちゃん!起きて!大変よ!」


朝から高いテンションの母に起こされ、

新聞を渡される。

俺、新聞は4コマとテレビ欄と

スポーツ欄しか見ないのに。

社会面を指差され、眠たい目を

擦りながらそこを見ると。




見慣れた顔が写っていた。




『全国高校生絵画コンクール』と書かれた

看板の下で、最優秀賞の盾と

賞状を持って笑う。




「マジかよ…すげぇ…!」


っていうか、一昨日メールしたのに

何も聞いてないんですけど!

…それがなんともあいつらしい。




「俺も負けてられねー!」


右手を突き上げる。


「その意気よ、亮佑!

とりあえず遅刻しそうだから急ぎなさい」


「…7時50分って…ヤバい通り越して

本気でやべぇ!!もっと早く起こせよ!」


「母さんも起きたの7時35分!」


威張って言うことではない。




慌ただしく準備をして、

食パンをかじりながらもう一度新聞を見る。

久しぶりに見た顔は、

誇らしげで輝いて見えた。




俺も一応、塾に通い始めて

学年ビリ3って世界から抜け出し

200番くらいをさ迷っている。

俺的に、すごい進歩だ!




この調子で頑張るから。

あんまり俺を置いていかないでくれ。

それと、ファンを増やさないでくれ。

絶対この写真でファンが急増しただろう。

立石が『コレは僕の妹だ!』と

鼻高々に違いない。

なんか悔しい…。




この恋は、甘いばかりじゃない。

辛くて苦しいこともある。

だけどそれすら愛おしい。




結局微妙な関係のままな俺たちだけど、

今はきっとそれでいい。

お互い成長するって約束が果たされたら

俺がお前を迎えに行くからな!

待ってろよ、胡瓜泥棒!

…間違えた、早苗!














**END**