夏 色 の 風





初めて読んだ時、

不覚にも………泣いてしまった。




夢オチじゃなかったんだ!!

早苗が俺のこと好きって書いてる!!

現実だったんだ!!

ばぁちゃんの名演技にまんまと騙された!!




っていう感動やら驚きやらで、

俺は泣いてしまった。

単純すぎるぜ、俺の脳みそ。




でも、本当に嬉しくて。

あの早苗が、"浮気は許さない"なんて

乙女なことを書いてる。

信じられない…

そんなこと言い出したら、

早苗が手紙を、こんなに素直で正直に

書いてる時点で信じられない…




まさか、こっちが夢なんじゃないかと

軽く3回は疑っている。

が、車のドアに指を挟んだり

頬っぺたを抓ってみた結果、

夢ではなさそうだ。




息子が後ろでニヤニヤしながら

頬っぺたを抓る奇行を目撃した母は、

心配して思い切り後ろを振り返り

もう少しで反対車線にはみ出して

対向車とぶつかるところだった。


「母さん、心配だわ…」


俺も無傷で家に帰れるか心配だ。




手紙をポケットに戻す。




代わりに、ポケットにあった

もう1つの紙を取り出した。

そこら辺にあるメモ用紙に、

乱暴な字で

『元気でな。いつでもまた来い』

と書かれてある。

ギックリ腰で見送りに来れなかった

樽澤さんがばぁちゃんに託したものだ。




ちゃんとお別れが言いたかったが、

いつか『再婚しました』って

ばぁちゃんと樽澤さんからカードが

届きそうな気がする。