昨夜のことが夢オチという

残念極まりない結果だったとしたら、

結局俺は早苗に想いを伝えられないまま

帰宅することになる。




ばぁちゃんと母がいる手前、

告白は出来ないだろうがせめて

…一目会って帰りたい。




母が「まだかなー」と

まるでサンタを待つ子供のように

早苗を待っている隣で、

心臓バクバクで今にも

気を失いそうになりながら、

ひたすら待った。




そんな俺を見て、ばぁちゃんが

「ちょっと」と居間から連れ出した。

そのまま、なんの躊躇いもなく

早苗の部屋に入る。


「ば、ばぁちゃん?」


「いいから、ほら」


俺も部屋に入り、ばぁちゃんは

閉めてあったカーテンを開けた。




久しぶりに入った早苗の部屋。

あの絵は、もう学校に持って行ったのか

部屋にはなかった。




「亮ちゃん、ごめんね…。

コレ、早苗から預かってたから」


ばぁちゃんは、ズボンのポケットから

一通の手紙を引き抜くと、

俺に手渡して部屋を出て行った。




状況が分からず、封筒を光りに

翳してみたりしてから、

書かれた字で差出人が誰か気が付いた。




『アホで馬鹿でマヌケな亮佑へ』




一発で分かる。




手紙を傷付けないように

慎重に手紙を開封する。

手紙は綺麗に三つ折りにされ、

2枚入っていた。




『亮佑へ』

そこから始まる手紙の内容に

俺は思わず、涙を零した。