夏 色 の 風





輝は、聞いていたよりも

ずっといい子だった。

直之が本当に好きなのだと

電話越しでも分かるほど伝わってきた。




そんな輝から奪ったのだ。




「頑張らなきゃ…ね」




円香は、直之に電話を掛けた。




『はい…円香?』


緊張で携帯を持つ手が震える。


「あ、あの。さっきはなんか

感じ悪かったかなって思って。

一応謝っておこうかなぁ…なんて…」




言葉がまとまらない。

必死に頭を回転させて、

必死に口を動かした。




『本当だよ!悪意満ちすぎ!

傷付いたんだぞー、俺は傷付いたぞー!』


ぁあ。

そっちがそんな風に言うから。


「だーかーら、謝ってるでしょー!」


こんな風にしか返せなくなる。




まず一度心と頭を落ち着かせるため、

深く息を吸った。吐いた。




心臓がドックンドックン、

すごい音を立てている。

今血圧を測ったら、

絶対ヤバい数字が出そうだ。




「あの…ね?」




ゆっくり。落ち着いて。




「あたしは…嫌いじゃないよ?」


『…え?』


「えっと、だから!

直之はいい奴ってこと!

いい人過ぎて騙されちゃわないか

心配なのよ、あたしは!

そ、それに、あたしは直之のそういう所

案外好きだったりするし!」




やはりいきなり素直になるのは無理だ。




『好き?!マジで?!

俺、調子乗っていい?!』


「乗るな!もーっ、あたし

直之のこういう所嫌い!」


『き、嫌い…。

気をつけます…』




でも、いつもよりは一歩進歩した。