夏 色 の 風





部屋に戻った直之は、

円香に電話を掛けた。




2コールで円香は電話に出た。




『はい…?』


「ぁ、オレだけど」




どちらとも、緊張で微かに声が震えていた。




「さっき…ありがとう。

あと、この間はごめん」


『別にいいのに…。

用件はそれだけ?』


「えっと、まぁ、うん…そうなんだけど。

さっき輝になんて言ったんだ?」


電話口の声が、僅かに早口になる。


『別に何も言ってないよ?

ただ、まぁ…偽彼女役として

一生懸命演技はしたけども。

輝ちゃんて、すごいね!

I LOVE 直之!フォーエバー!

みたいな勢い?直之のどこがいいんだか』


「おい、一言余計だぞ!

俺は意外と女にモテる!

亮佑の10倍はモテるね」




実際は、5倍くらいかもしれないが。

とりあえず亮佑より恋愛偏差値が

高いことは確実だろう。




『ふーん?世の女性って見る目ないねぇ。

または、あれかな?お財布代わり?』


「ひどい!悪意しか感じない!

嘘じゃねーって!俺、モテる!

まぁ、見た目はいいし?

頭も運動神経もいいし?

ギャクセンも高めだし?

逆にモテないわけがないだろ」


『あーそうですか、めでたい男ね。

直之の未来が目に浮かぶよ…。

女と腕組んで銀ブラして、

後日請求が山のように来るけど

女は去ったあと…直之に残るのは

儚い思い出と大量の借金だけ…。

…どんまい!

じゃ、あたしこれから用があるから

電話切るね。バイバーイ』


「ちょ、円香!まど…っ」




すき放題言って、円香は電話を切った。

ちゃんと御礼がしたくて、

ちゃんと謝りたくて電話したのに

まったく意味がない。

というより、心に針を刺された男が一人

溶けかけのアイスを目の前に

落ち込むだけだった。