直之の心臓が、先程より早く鼓動する。
ここから先はノープランだ。
じっと見つめられる輝の視線が
静かに、しかし確実に直之を搦め捕る。
すぐにコーヒーが運ばれ、
直之にはまたアイスコーヒーが出された。
一口コーヒーを飲み、コップを
ソーサーの上に戻すと、輝は微笑んだ。
「それで…早速なのですが」
いきなり本題が始まる。
直之は顔が引き攣らないよう注意しながら
ごくんと唾を飲み込んだ。
「よく考えれば、非常識でございました」
輝の口から、予想だにしなかった
言葉が飛び出した。
「わたしの悪い癖なんですの。
思い込みが激しいとか、
すぐ舞い上がって見境がなくなるとか」
自覚はあるのか。
それとも古山田さんに説教されたのか。
どちらにせよ、もっと早く
その言葉を聞きたかった。
「ですが、既に第三者の方まで
巻き込んでいるのです。
それに直之様をお慕いしているのも事実。
わたしがお2人の愛の真贋を見極めます!」
せっかく上手い具合に話が
纏まりかけたのに、やはりオチは
そうなってしまうのか。
がっくりうなだれ、古山田さんの
同情に満ちた視線を感じる。
古山田さんは先程から見届ける側に徹し
もう輝を止める気はなさそうだ。
もうちょっと粘ってくれてもいいのに、
と思いながら、刻々と迫るその時を
どう切り抜けるか頭を働かせた。

