神妙な顔つきで、古山田さんは言う。
「お嬢様を止めるのが、わたしの役目。
それをいとも簡単に直之様に
パスしてしまい、お目付け役失格です…」
「ま、まぁ。あの暴走は異常ですから
パスしたくなる気持ち、分かります」
被害者は直之だけではない。
むしろ、日夜共に過ごしている
古山田のほうが気苦労が多そうだ。
そこに今回の暴走が加われば、
普段いかに優秀な人物も
発狂してもおかしくはない。
…だからと言って、
こちらにパスされても困るのだが。
「それから、電話の件なんですが…
どうなさるおつもりですか?
何か、わたしに出来ることがあれば
なんなりとお申し付け下さい」
「ぁあ…ははは、
実は困ってたんですよねぇ。
輝さんから逃げようと知恵を
回したつもりが、逆に自分の
首を絞める結果に繋がりそうです」
「えっ?!じゃあ、彼女役の方
見つからなかったんですか?
…もっと早く言って下されば
適当に誰か準備いたしましたのに」
"何の手も講じず乗り込んで来るなんて
本気で馬鹿なのか、お前は"
古山田さんの視線が痛い。
「まぁ、一応なんとかしようと
思ったんですけどね…。
中々上手くいかないですね、人生って」
はははは、と乾いた笑いしか出て来ない。
ちょうどアイスコーヒーと
ミルクレープが運ばれて来たので、
話しは一時中断された。
それから10分程、古山田さんの
呆れたような視線を浴びながら、
直之はミルクレープと
アイスコーヒーを堪能した。
ちょうど食べ終えたころ、
店の扉についたベルが鳴り、
噂の人物が姿を現した。
「直之様!
お待たせして申し訳ございませんでした…。
直之様をお待たせするなんて、
一生の不覚ですわ」
申し訳なさそうに眉を下げ、
輝は鞄を奥に置き、コーヒーを注文して
直之の向かい側に腰かけた。

