夏 色 の 風





部屋から追い出された2人は、

扉を叩きながら、必死に声を上げた。




「直之、ごめん!母さんが悪かった!

このとおりよ、許して!」


「直之、何があったのか

父さんに言ってみろ!男同士

話しをしよう、酒でも飲みながら」


「こら、直之は未成年でしょ!

直之、今夜は何か美味しい物でも

食べましょう!たまには贅沢しましょ!」




父と母が、ここまで反応するのには

いくつか理由がある。




その中で特に大きな理由が、

"直之は家に負の感情を

あまり持ち込まない"からだ。




父に似たせいか、直之は

その場で怒って、その場で泣いて

その場で落ち込んで、すぐ立ち直る。

亮佑いわくスーパーポジティブ野郎だ。




勿論、家で見ていたテレビが

お涙頂戴モノで、魂胆に嵌まり

泣くことはある。

が、"学校で○○があったから

落ち込んで帰って来る"ということは

余程のことがない限りない。




それがどうしたことやら、

今年の夏休みは何かが違う。




「反抗期かしら…」


「あぁ、ついに来たのかもな…」


「きっかけはあたし?」


「ぁあ、だろうな…」




うんともすんとも返事をしない直之に、

両親はぽつりと呟く。




一方の直之は、携帯を

開けたり閉じたりしながら

必死に頭を捻らせていた。




頭がいいくせに、こういうとき

上手く働かない。




「俺は一体どうすれば…」




結局高橋家も寿司の出前を頼み、

両親の心配そうな視線を余所に

直之はかっぱ巻きを醤油につけながら

大きなため息をついた。