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通話を終えたばかりの携帯電話を握りしめ
直之は魂まで抜けていくんじゃないかと
思うほど、ため息をついた。
「さいっっっあくだ…」
お先真っ暗。
自分で自分の首を絞めてしまった。
これでは円香の言ったとおり、
本当に輝と付き合うという恐ろしい未来が
やって来てしまうではないか。
期日は明日なのに、唯一の味方を
自分の手で無くしてしまった。
円香の冗談を冗談と受け止められず、
軽い口論にキレてしまった。
「最悪だ、本当に最悪過ぎる…」
後悔先にたたず、とはよく言ったものだ。
直之は部屋の中を意味もなく歩き回り、
最終的に壁に頭を打ち付けた。
ドアの隙間から、物音を聞いて来た母と、
帰宅し何事かと慌てて来た父が
青い顔で部屋を覗いていた。
それはもう、奇妙な光景だった。
「直之!!どうした、頭でも打ったのか?
いや、頭は今打っていたのか…
ま、まさか母さんに日夜パシられて
精神的におかしくなったんじゃ…!」
「ちょっと、あなた!
勝手に悪者にしないでよ!
どうしよう、救急車呼ぶべきかしら」
「悪者だろ、明らかに!
そうだな、救急車を呼んだほうが…」
携帯で救急車を呼ぼうとする父を、
父より青い、もはや白い顔の直之が制した。
「ひぃっ」と情けない声を立てて、
父は携帯を手放す。
「2人とも…大袈裟だから。
大丈夫だから、心配すんなって…」
「いや、無理だから!
その顔で大丈夫とか言われても
説得力ゼロだから!」
母のツッコミにも、直之は動じず
2人を部屋の外に追い出した。

