円香は苦笑いをしながら、
携帯を充電器に差し込む。
「あっはははは、ちょっとー」
「まさか、やっぱり恋煩いとか
言うんじゃないでしょうね?!
あらま、やっだわー。若いっていいわねぇ」
人事である。
さっきまで心配そうにしていた母は
まるで近所のおばちゃんの
井戸端会議のような手つきで笑う。
「ははは…頑張ります…」
さすがの円香も苦笑い。
自分も大人になったらこうなるのかと、
少し不安になってしまう。
「そうそう!うんと悩みなさい。
悩むのが1番よ!ちゃんと悩んで、
悩んで、悩み抜いて自分の中でビシッと
結論出せればそれでいいの!
お母さんみたいに、出会ってすぐ
舞い上がって結婚すると後が大変よ…。
あ、それから今晩お寿司とるって
ハルばぁが張り切ってるから。
円香はいつものでいいわね?」
舞い上がったのか、
舞い上がってしまって父と結婚したのか。
舞い上がった末に円香が生まれたのか…。
「いつもので、お願いします…」
ツッコミを入れたいが、
そこを突っ込んでいいのか微妙に分からず
円香は微笑みで母を部屋から追い出した。
「悩んで、悩み抜いて…か」
ベッドにゴロゴロ転がって
頭をぐるぐる回転させてみる。
…目が回って気持ち悪くなった。
髪もぐちゃぐちゃだ。
だが頭は少し冷静さを取り戻した。
「直之に謝らなきゃな…」
ひどい事を言った。
最低なのは、円香だ。
この件で1番被害を受けているのは
誰あろう直之なのに。
突然、携帯が鳴り飛び起きる。
直之だと思いきや、亮佑からだった。
「あっ、もしもし亮佑?
さっき出れなくてごめんね!
用事なんだったの?またナエちゃん?」
その姿は、いつも通りの円香だ。
母のおかげか、元々のポジティブ思考復活か。
今まで抱えていた荷物が、わずかに
軽くなったような気がした。

