「ついに決戦かぁー…。
ねぇ、めんどくさいから
付き合っちゃえば?」
特に意味なく言った円香だが、
直之は勘違いしたのか、
少し落ち込み気味に
『…ぇ?!告白は俺からって
決めてたのに…』
と呟く。
円香はその意味を敏感に察知し、
慌てて誤解を解いた。
「あ、あたし達じゃなくて!
直之と輝ちゃんが、だってば!」
『ぇえ…?なんだよ、期待させんな。
俺と輝?あー、絶対ない』
「勝手に勘違いしたのそっちじゃない!
お似合いだと思うけどなーっ」
『んな訳ないだろ!
俺はお前を諦めないって
言ったはずだけど?』
「"友達"って言ったじゃない!
まさか、輝ちゃんなんて実は嘘で
あたしの気を引く作戦なの?
最低だね、最低だよ、最低!
やっぱりあたしは亮佑みたいな
馬鹿だけど真っ直ぐな人が好きだなー」
――ぁあ、違うのに。
言いたいことは、もっと違うことで
ちゃんと話しをしたいのに。
円香の口から滑り落ちるのは、
直之を傷付けてしまう言葉ばかり。
最低なのは、誰だ。
『俺が円香に嘘つく理由がないだろ。
別に俺は"同情票"狙いで円香に
(仮)彼女を頼んでるわけじゃない。
迷惑なら、いいよ別に。
巻き込んで悪かったな』
「ちょっ…直之!!なお…」
電話の向こうから聞こえてくるのは
虚しい切電音。
「うわ、やば……」
また新しい頭痛の種に、
円香は頭を抱え込んだ。
そこへ、再び扉をノックする音がする。
「はーい…」
正直、このまま眠りにつきたかった。
入ってきたのは母親だった。
「円香ー、晩御飯だけど今夜は…
って、何?どうしたの?」
入ってすぐ、円香の様子が
おかしいことに気付いたのか
ベッド脇に寄って来る。

