変なことに巻き込まれたせいで、
直之の顔が頭から離れない。
「いい加減離れてよ、もぉ!」
ベッドの上で暴れてみたが、
やはり直之の顔が離れない。
本当に頭がおかしくなったに違いない、と
円香は思い込んでいた。
いや、思い込みたかった。
――原因は分かっている。
だが認めたくない。
そんなはずはない、有り得ない。
きっと、特殊過ぎる直之の現状に
同情しているだけだ。そうに違いない。
「あたしが好きなのは、
亮佑と立石先輩だもん。そう、そうよ!」
不安で声に出てしまう。
そうやって自問自答して、早2日だ。
「はぁ…」
同時に、携帯の着信音が鳴る。
身体を起こして携帯を探し、
通話ボタンを押しながら横になった。
「…はい、円香です」
『あ、俺だけど』
「……」
今1番声を聞きたくない
相手からの電話だった。
『もしもし?』
「ぇっ、ぁ、もしもし?
どうしたのー?」
『なんだよ、亮佑からの
電話だと思ったのか?
悪かったねー、俺で』
「分かってるならかけて来ないでくれる?」
『うぉっ、不機嫌絶好調だな。
ごめんなさいね、俺が変なこと
頼んだせいで』
まったくだ。
おかげで頭を悩ませる羽目になった。
近くにいたら文句を言いまくって、
一発殴ってやりたい。
「で…何かあったの?」
『ぁあ…ほら、電話するの明日だろ?
だから先に打ち合わせしとかないと
話しが噛み合わなくなったら困るし』
「ぁー…明日か」
ついに明日か。すっかり忘れていた。

