夏 色 の 風




  ……*……*……*……*……*……




「はぁ……」




ココに、悩める人物がもう1人いた。




大きなため息をつき、

読んでいた雑誌を閉じる。

携帯をいじってみても、

なんだか落ち着かずソワソワした。




「どうしたの?具合でも悪いの?」




祖母が、心配そうに顔を覗き込む。




「えっ?ぅうん、至って健康だよ?」


「あーら、じゃあ恋煩い?」




関係がないはずの母親が、

夕飯をテーブルに並べながら言った。

…下手くそなウインク付きで。




「まぁ!恋煩い?素敵ねぇ」


「なんでそうなるのよ!

話しが飛躍し過ぎ!全然違うもんっ」




2人のペースに巻き込まれると

あらぬことを喋ってしまいそうで、

円香は雑誌を持って自室に逃げた。




ピンク色で統一された部屋は、

なんとも円香らしい。

円香はクリーム色の生地に

ピンク色のビジューと刺繍が施された、

お気に入りのクッションを抱え込んだ。




「はぁ……」




もう一度ため息をつく。

なんだか最近身体の調子が悪い。




大好きな亮佑、立石先輩を見ても

全然ときめかない。




風邪でも引いたのだろうか。

それとも遅れている女の子の日のせい?




――いや、違う。







最近おかしいのは、直之から

(仮)とはいえ彼女役を頼まれてからだ。




早苗に成り切るのは楽しみだが不安だし、

フった男の彼女役というのは

随分おかしな話しだ。