ようやく震えが収まった携帯を拾い、
原因を探ってみた。
「…やっぱりか………」
探るまでもなかった。
受信ボックスは科野 輝の名前で
溢れていたのだ。
どれもこれも、
『メールの返事がありませんが、
もしや直之様の御身に何か
あったのでございますか?
わたしはすごく心配しております…
直之様の輝より』
例え何かあったとして、
救急隊員がこの携帯を見たとき
きっと事情を察してくれるに違いない。
電池がなくなるほどの威力。
アッパレというか、恐るべし。
古山田さんからの謝罪メールは
今回は入っていなかった。
そのかわり、1通のメールが入っていた。
『直之様、申し訳ありませんが
わたしでは手に負えません。
陰ながら応援しています。ふぁいと!』
昨日会ったばかりなのに、
何故か戦友のように感じていたが
それは直之だけだったのだろうか。
「裏切りだ…」
頭を抱えても怒る人はいないと思う。
直之は輝にメールを作成し、
彼女が輝と話してみたいと言っている
という旨を伝えた。
返事は1分もかからず返ってきて
最初の10行は『心配しておりました』で
次の5行が熱烈ラブメッセージ、
最後の1行に
『○日の昼頃、店でお会いしたいです』。
比率がおかしいことは置いておき、
円香に指定された日の昼間
大丈夫かメールした。
その日の夜になって、円香から
『大丈夫だよー☆ついに決戦ですな!』と
メールが来た。
「決戦ねぇ…」
直之はがっくり肩を落としつつ、
カレンダーの指定された日にバツをつけた。
――あと3日後。
直之は盛大なため息をついて、眠った。

